『珍談』 泥棒の法

附馬牛村の阿部某という家の祖父は、旅人から泥棒の法をならって腕利きの盗人となった。しかしけっして近所では悪事を行わず、遠国へ出て働きをしたという。年をとってからは家に帰っていたが、する事がなく退屈でしかたがないので、近所の若者たちが藁仕事をしている傍などへ行っては、自分の昔話を面白おかしく物語って聞かせて楽しんでいた。ある晩のこと、この爺が引き上げた後で、厩の方がたいへんに騒がしい。一人の若者が立...

『怪異譚』 火の玉に焼かれた男

昔、下総の国(現在の千葉県)銚子の浜に、小舟に乗って漁業を営んでいる喜助という盲人がおりました。この男、元々は両目とも見えていたのですが、生まれつき、歪んだ心の持ち主であった彼は、文政(1818~1830)の頃に常陸国(現在の茨城県)大宝の八幡宮に奉納されていた刀を盗み出したことで、天罰が下り、両目が潰れて盲人となっていました。しかし、それでも彼の曲がった性根は治らなかったようで、今度は、銚子の飯...

『伝説』 百椀とどろ

昔、日向国(現在の宮崎県)北方村字荒谷というところに『百椀とどろ』という場所がありました。そこは谷に沿って流れる川が滝となっている所でして、周囲を林に囲まれた昼さえ薄暗い淵でした。そんな少々不気味な場所ですが、荒谷に住んでいる人々は来客があった際など、必要な食器が足りない場合、そこへ、お椀を借りに行くことがあったのだそうです。淵でお椀を借りるとは、どういうことか。とても不思議な話ですが、人々がその...

『妖怪』 おとろし

全身毛むくじゃらの妖怪おとろしです。以前、資料や解説文などが存在しない正体不明の妖怪わいらを紹介したことがありますね。こちらのおとろしは、そのわいら同様、どのような妖怪なのか、伝えられている話はほとんど皆無です。おとろし、という名前から「おどろおどろしい」や「おどろ髪」といった言葉と関連しているらしいのですが、それ以外、これといった説明はありません。というと、話がここで終わってしまうので、今回はこ...

海と空と潮風と JR下灘駅にて

GWということで旅に出かけたはいいものの、どこに行くべきかと迷った挙げ句、今回は四国の愛媛県に。しまなみ海道を渡り、海沿いの道に車を走らせていくと、絶景と有名なJR下灘駅が見えてきました。なんでも、日本一海に近い風光明媚な無人駅だと言うことで、訪れてみると、確かに線路の向こうに海を望む絶好のロケーション。天気が良かったこともあってか、駅内には他のカメラマンも多くいました。朝早かったですが(七時くらい)...

『怪異譚』 金弥と銀弥②

前回のお話の続きからです。 →『怪異譚』 金弥と銀弥①仲の良い親友、金弥の正体が物の怪であることを知ってしまった銀弥は、その真実を胸の内にしまい込み、平静を装おうとしますが……。夜が明けると、二人は再び仕事を始めました。銀弥の心は動揺が続いていましたが、それを悟られまいと、いつもより明るく振舞いました。そして、また夜になり、厠へも二人で行きましたが、今回銀弥は中を見ることはせず、一緒の布団に入っても、...