『風習・しきたり』 花見について

季節が春めいてきましたね。気温も温かくなり、全国で桜の開花宣言がされ、東京の辺りでは既に満開の場所もあるのだそうですよ。今週、来週辺りは多くの方がこぞって「花見」に出かけるのではないでしょうか。さて、この「花見」ですが、日本の文化として根付いたのは、いつ頃なのかご存知の方はいらっしゃいますか?平安時代? 奈良時代? それよりも前?さらに、元々、何をするための行事であったのか、と言われれば、解答でき...

『怪異譚』 通夜の晩

その昔、関東で起こったことでございます。とある侍が、主人の命令に背いたことで、東岸寺という寺で切腹させられたことがございました。その者の葬儀を明日に控え、寺の坊主たちは準備を行った後、死人を棺に入れ、寺の客殿に安置しておりました。客殿には坊主が十人ほど死体の番をしていたのですが、夜も更け始め、疲れもあってか、皆次第に壁によりかかり、居眠りを始めます。そんな中、棺から遠い場所にいた二人の坊主は眠るこ...

『昔話』 蟹問答

むかし、むかし、偉いお坊さんが修行の旅にでかけたことがありました。ある日のこと、そのお坊さんが山の中を歩いていると、いつの間にか陽が暮れてしまい、どこか泊まれるところはないかと探しておりました。すると、道の先に小さな小屋がありました。そこにはどうやら木こりが住んでいるようで、一晩だけでも泊めてもらえないかと話してみることにしました。しかし、木こりは首を横に振ります。「こんな狭っ苦しいところにはとて...

『怪異譚』 怪枕

およそ古い物は、怪しき陰気をまとって、妖怪となることがございます。元々、それらは悪い気の集まりであるので、気力の薄い人はこういったものに抗えず、病みついたりするものです。これは、私が幼い頃に、森田某という人から聞いたお話であります。江戸深川三十三間堂の近くに空き家が一軒あったのですが、そこにとある医者が引っ越してきました。最初は問題なく過ごしていましたが、しばらくして病気になり、寝込んでしまうよう...

『妖怪』 野衾(のぶすま)

野衾(のぶすま)は鼯(ムササビ)の事なり。形蝙蝠に似て、毛生いて翅(はね)も即肉なり。四の足あれども短く、爪長くして、木の実をも喰ひ、又は火焔をもくへり今回ご紹介するのは「野衾」なる妖怪です。しかし、妖怪とは言っても、上記の説明文にある通り、これは列記とした日本に生息する動物、ムササビのことを言っています。夜行性で木々の穴の中に棲みつくことで知られ、特に高い樹木の間を手足を伸ばして滑空し、飛び移る...

『神様』 桃の神様 オオカムヅミ

まだまだ寒いですが、少しづつ温かい日も増え、次第に春めいてきたように思います。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。お日様のぬくもりが恋しいこの時期は、旧暦の二十四節気では啓蟄(けいちつ)、さらに細かい分類の七十二候では桃始笑(ももはじめてわらう)と呼ばれています。桃の花啓蟄とは、春の陽気に誘われて土中の虫たちが徐々に地上に這い出してくる季節で、桃始笑とは、桃の花が咲き始める頃合いです。花が咲くことを...

『珍談』 神足の男

昔、石原市正という早足の達人がおりました。この男は京都に住んでいるのですが、大阪の友人に会いに行くことはまるで隣町に行ってくるかのように、容易く行き来してしまいます。時には、日帰りで参拝などして帰ることもあるといいます。ある時、この石原という男に所用があって山道を通ったことがあったそうです。そこに山賊二、三人が立ちふさがって酒を飲む金を寄越せと脅しました。しかし、この男は落ち着き払った様子で、ここ...

『怪異譚』 天冠の女

土淵村の若者共が同勢二十人ほどこぞって、西内山付近になる隣村の刈草場へ、刈草を盗みに行った時のことである。こういう時には、どうかすると山で格闘をしなければならぬことがあるので、それぞれその準備をして行った。一行のうち宇野崎の某が一人、群れから離れて谷の古沼の方へ下りて行くのを、たぶん水を飲みに行ったのだろうくらいに思っていたが、盗んだ草を馬に荷なって帰り仕度をしてしまった後になっても、その男一人帰...