『怪異譚』 御香宮の女房

 伏見の里の御香宮(ごこうのみや)は神功皇后の御廟であり、立派な大社で、多くの人々が崇め奉っている場所でございます。宿願を持つ者たちは絵馬を奉納して祈りを捧げるのですが、その願いが叶えられないということはございません。 そのため、多くの絵馬が神前に捧げられ、繋馬(つなぎうま)、挽馬(ひきうま)、帆掛舟、花鳥草木などや、中には美女の遊ぶ姿を描いたものなどもあります。 さて、文亀年間(1501~150...

『怪異譚』 火の玉に焼かれた男

昔、下総の国(現在の千葉県)銚子の浜に、小舟に乗って漁業を営んでいる喜助という盲人がおりました。この男、元々は両目とも見えていたのですが、生まれつき、歪んだ心の持ち主であった彼は、文政(1818~1830)の頃に常陸国(現在の茨城県)大宝の八幡宮に奉納されていた刀を盗み出したことで、天罰が下り、両目が潰れて盲人となっていました。しかし、それでも彼の曲がった性根は治らなかったようで、今度は、銚子の飯...

『怪異譚』 金弥と銀弥②

前回のお話の続きからです。 →『怪異譚』 金弥と銀弥①仲の良い親友、金弥の正体が物の怪であることを知ってしまった銀弥は、その真実を胸の内にしまい込み、平静を装おうとしますが……。夜が明けると、二人は再び仕事を始めました。銀弥の心は動揺が続いていましたが、それを悟られまいと、いつもより明るく振舞いました。そして、また夜になり、厠へも二人で行きましたが、今回銀弥は中を見ることはせず、一緒の布団に入っても、...

『怪異譚』 金弥と銀弥①

いつのころでありましょうか。国一つを治めている太守がおりました。そこに宮仕えをする15、6歳ほどの少女が二人いたのですが、どちらも大変美しい乙女で太守も大変可愛がられていたそうです。一人を金弥(きんや)と呼び、もう一人を銀弥(ぎんや)と呼びました。この二人は特に仲がよく、どこに行くのも何もするのも一緒でした。一年ほど経った頃でしょうか、金弥は病気になり、療養のために両親の元に帰ってしまいました。故...

『怪異譚』 塩の長司

家に飼たる馬を殺して食しより、馬の霊気常に長次郎が口を出入なすとぞ。この事はむかしよりさまざまにいひつたえり。                                  ― 絵本百物語 桃山人夜話より ―昔、加賀国(現在の石川県)小塩の浦に塩の長司という者がおりました。彼は裕福な男で馬を三百匹も飼っていたといいます。しかし、悪食で馬肉を食べることを好み、飼っていた馬が死ぬと、その肉を切り分け...