2017-06-27

菖蒲華さく

七十二候(しちじゅうにこう)というものを御存知ですか?

あまり聞き慣れない言葉ですが、簡単に説明すると、日本に古くから伝わる季節の呼び名の事です。

え、それって、立春とか、夏至とかのこと? と思う方がいるかもしれません。

大変おしいですね。

それは二十四節気(にじゅうしせっき)と言って、この七十二候の親となる季節の区分のことです。

どういう意味かと申しますと、そもそも日本には季節の区分けとして、四季がありますよね。

この四季の春夏秋冬をそれぞれの季節で6等分して分類したのが、二十四節気。

そして、この二十四節気の区分をさらに三等分して出来たのが、七十二候、というわけです。

あまり知られていないと思いますが、実は日本にはこれほど細かな季節の区分があるんです。驚きですよね。

昔の人はそれほどまでに季節の移り変わりに敏感だったのでしょう。



さて、そんな七十二候ですが、6月も終わりに差し掛かったこの頃(大体6月26日~30日頃)のことを、菖蒲華(あやめはなさく)と言います。

文字通り、菖蒲(あやめ)の花が咲く時期のことで、全国的に梅雨が到来する頃と言われています。

夏まではもう少しかかるかな、という印象ですね。

有名な行事としては、茅の輪くぐりがあります。

チガヤという草で編んだ大きな輪っかをくぐることで、病気や災いと言った厄を落とす、昔からの神事です。ニュースなどでもよく放送されているので、知っている方もいるでしょう。


ところで、この菖蒲の花ですが、同じ時期に同じような花を咲かせるカキツバタという花を御存知でしょうか。

どちらも紫色をした美しい花なのですが、あまりにそっくりなので、ある程度見慣れていないと見分けることが出来ません。

写真を用意したので、見てみましょう。

菖蒲(あやめ)

↑菖蒲(あやめ)

カキツバタ

↑カキツバタ


どうでしょうか。かなりそっくりですね。

その認識は大昔からあったようで、どちらも優れていて、選択に迷ってしまうという意味で、「いずれアヤメかカキツバタ」なんて言葉も残っているほどです。

ちなみに、違いとしては、菖蒲の花弁には白い網目模様があるのが特徴ですよ。


もし、今度見かけたら、見分けられるか試してみてはいかがでしょうか。
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2017-06-25

天照大御神② 弟神の乱心

susano.jpg



さて、神話シリーズの第二弾、ということで前回の天照大神の物語の続きです。

今回登場するのは、天照大御神の弟神、素盞嗚命(スサノオノミコト)です。

姉に負けず劣らず有名な神なので、名前を知っている人は多いと思います。

おそらく、大抵の方が化物退治をした、勇猛果敢な戦士のような神様、というイメージをお持ちではないでしょうか。

知らない、という方もいらっしゃると思うので、簡単に説明していきましょう。

まず、この神の誕生に関してですが、前回登場した父神であるイザナギノミコトが禊をした際、イザナギの鼻から生まれたと言われています。

そして、父親から天上世界の統治を命じられた天照大御神とは異なり、スサノオノミコトは海の世界の統治を命じられます。

しかし、彼はその指示に従わないどころか、母親であるイザナミに会いたいと泣き叫び、山を枯らしたり、海や川を干やがらせたりと大暴れ。ついには、彼の行いで地上世界に邪神たちが現れ、多くの災いを起こしたと言われています。

これには父親であるイザナギも黙ってはいません。

落花狼藉の限りを尽くすスサノオに、地上世界からの追放を言い渡します。

さすがにこれにはスサノオも困るかと思いきや、最初から母親に会うため、黄泉の国に行くつもりだった彼にとって、それはむしろ都合が良いものでした。


「ああ、お望みどおり出ていってやるさ。けれど、お母様の所に行く前に、お姉様に挨拶しておかなくちゃな」


そう考えた彼は天照大御神のいる天上世界に向かいます。

しかし、その勢いは凄まじく、大地を揺らす彼の歩行に、天照大御神は弟神が天上世界を占領しに来たのではないか、と勘違いします。


「ただ、ご挨拶をしにきただけです」


スサノオは必死に説明するも、天照大御神の疑いの気持ちは晴れません。何しろ、今まであんなに地上で派手に暴れていたのですから、無理もないでしょう。


「では、私を納得させる証拠を見せなさい


そう言い放つ天照大御神に、たじろぐスサノオ。

さあ、窮地に追い込まれてしまいました。

しかし、そこでスサノオはある提案を思いつきます。


「そうだ、お互いの持ち物を交換し、噛み砕いて神産みを行いましょう」

「神産み、ですか?」

「はい、わたしの持ち物からはきっと女神が生まれます。それこそが私が真実を言っている証拠になるかと」


了承した姉神はスサノオと持ち物を交換し、神産みを行います。すると、彼の発言通り、スサノオの持ち物からは女神が生まれたではありませんか。


「どうやら、私は勘違いをしていたようです」


これでようやく溜飲を下げた天照大御神にスサノオは喜びます。


(姉上に認められた!)


気持ちが舞い上がった彼は、何を思ったか、よせばいいのに天上世界でも悪さをしでかし始めます。

神聖な畑を壊したり、神殿で糞をしてみたり、間接的にとはいえ、機織女を殺してしまったり、とんでもない乱暴ぶりです。

最初は庇っていた天照大御神ですが、そのあまりの傍若無人ぶりに、ついに堪忍袋の緒が切れてしまいます。


「スサノオの行いはあまりにも酷い、もう見ていられない」


押し寄せる怒りと悲しみに彼女は天の岩戸と呼ばれる洞窟に潜り、岩で入り口を塞ぐとそのままそこに籠もってしまいます。

さあ、大変なことになってしまいました。

太陽の女神である天照大御神が洞窟に籠もってしまえば、当然、太陽の光も消えてしまいます。


昼も夜もない暗黒に閉ざされてしまう世界


地上ではまたしても邪神が現れ、天変地異も起こり始めます。


「これはまずいことになったぞ」


天上世界ではこの非常事態に、多くの神が招集され、会議が開かれました。

その結果、世界滅亡打開のための大勝負に出ることになるのですが……長くなるので、今日はこの辺で。






何かと化物退治の武勇伝の方をクローズアップされがちのスサノオノミコトですが、最初はこんなにワガママで粗暴な神様だったんですね。

ある意味では、色んな表情を持っていて人間らしいとも言えなくもないですが、お姉さんを悲しませるのはいけませんよね。

2017-06-24

オット鳥 谷底から響く悲しき声

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山にはさまざまの鳥住めど、最も寂しき声の鳥はオット鳥なり。夏の夜中に啼く。浜の大槌より駄賃附の者など峠を越え来れば、はるかに谷底にてその声を聞くといへり。昔ある長者の娘あり。またある長者の男の子と親しみ、山に行きて遊びしに、男見えずなりたり。夕暮れになり夜になるまで探し歩きしが、これを見つけること得ずして、つひにこの鳥になりたりといふ。オツトーン、オツトーンといふは夫のことなり。末の方かすれてあはれなる鳴き声なり。

                                             ―「遠野物語」より―





今回は、鳥の鳴き声に関する民話の紹介です。


僕はわりと田舎の方に住んでいる人間ですが、田舎であっても、都会であっても、鳥の声というものは生活の中で自然に耳にするものだと思います。

しかし、その一つ一つをわざわざ注意して聞くことって、あまりないのではないでしょうか。

オットーと鳴くオット鳥と言われても、どんな鳥? と思う方が多いと思います。

さて、その正体は諸説あるようですが、中でも、フクロウ目フクロウ科コノハズクのことを指しているという説が有力だそうです。

ああ、知ってる、という方も、知らない、という方も実際にその鳴き声を聞いてみましょう。



いかがでしょうか。確かにオットーと鳴いているように聞こえますね。

この声にどんな印象を持たれましたか?

可愛らしい声にも聞こえますが、これが真夜中に谷底の方から聞こえてきたら、ゾッとする心地と共に、物寂しさも伝わってくるような気がしませんか?

居なくなってしまった恋人を探す内に、ついに鳥へと変身し、今なお探し続けている乙女の魂。

そんなイメージを重ね合わせてもう一度コノハズクの声を聞いてみると、二度と成就することのない恋の悲しみが、そこに秘められているように感じます。

たかが鳥の声、と思う人もいるでしょう。

しかし、世に無数にある鳴き声の中で、なぜ、この鳥はこんな鳴き方をするのか。


その理由がこんなお話だったら、ただの鳥の声が味わい深い一つの名曲に変わるような気がしませんか。

2017-06-22

わいら

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今回ご紹介するのは、わいら、です。

上の絵では、木々の間から牛のような獣がのっそり姿を現しているところが描かれていますね。よく見ると、足の先には長い鉤爪を持っていて、こいつで引っ掻かれると痛そうです。

妖怪好きな方は一度は目にしたことのある絵ではないでしょうか。

しかし、では、この妖怪がどんな妖怪か、と問われると、まともに答えられる人は多くないと思います。

それもそのはずで、この妖怪、とにかく情報がない

古い資料にはいくつか同じような絵が残っているのですが、いずれにも解説文は残されておらず、他の書物にもこれといった情報は記されていないそうです。

どこに現れるのか、いつ現れるのか、何をするのか、一切不明。

さらに、唯一情報として残っている絵においても、なぜか化物の上半身しか描かれておらず、下半身部分、または、全体像を描いたものがありません。

一体、これはどういうことなのか。何を意味しているのか。

謎多き妖怪、わいら


しかし、こんな風に分からなければ分からないほど、燃える気持ちって共感出来ますか?

僕はこういう変な奴ら、怪異の中でも異端視されるような奴らに、とにかく惹かれるんですね。

なんだかよくわかんないけど気味が悪い。理論や理屈で説明がつかない珍奇な何か。

けれど、理解しようと踏み込むと、底の知れない暗闇に落ちてしまうような気がして、すっと後ずさってしまう感覚。


伝わりますかね。難しいかな。

うーん。


例えるなら、そう、この見えそうで見えないわいらの下半身なんてどうでしょう。

ほら、チラリズムですよ、チラリズム!

見たいな、っていう気持ちと、見たらいけない、っていう気持ちがひしめく感じ。




そう、僕は妖怪のチラリズムに興奮する奴なんです(意味不明)。

2017-06-21

みそ買い橋

780648.jpg


昔むかし、飛騨国の乗鞍山の麓、沢上というところに、長吉という真面目な炭焼きがおりました。

ある夜のことです。この長吉の夢に白髭のおじいさんが現れて言いました。

「長吉よ、高山の町へ行って、みそ買い橋の上に立っていてみろ。良いことがあるぞ」

はて、良いこととは何のことだろうか。夢の中の出来事とはいえ、長吉は忘れられません。気になって仕方がないので、高山まで行ってみることにしました。

朝早くに背中に炭を背負い、野を越え山を越え、炭を売り歩きながら、ずんずん行くと、やがて高山にたどり着きました。

そして、目的のみそ買い橋を見つけるのですが、その橋はいかだを繋いで拵えたものだったそうです。

年寄りに話を聞くと、川向うの味噌屋に味噌を買いに行くのに架けた橋だったため、その名がついた、ということでした。

「よし、とりあえず、この橋で待ってみるか」

長吉は橋の真ん中に立っていましたが、何時間経っても何も起こりません。ついには一日が過ぎ、二日、三日と、橋の上で待っていましたが、一向に良いことはありません。

しかし、長吉はそれでもめげずに橋の上で立ち続けました。

そうすると、その長吉の姿を不審に思ったのか、橋のたもとの豆腐屋の主人が出てきて、彼にこう問いました。

「お前さんお前さん。あんたがどこのどいつかは知らんが、どうしてまたこんな場所で何日も突っ立ってるんじゃ?」

長吉は自分が見た夢のことをカクカクシカジカと語ると、豆腐屋は吹き出して笑いました。

「物好きな奴もおったもんじゃ、そんな夢を本気にしおって。しかし、夢と言えば、わしもつい数日前、同じように不思議な老人の夢を見たのう」

「ほう、どんな夢じゃ?」

「それがの、なんでも乗鞍山の沢上というところに長吉というものがおるらしい……」

これを聞いた長吉は「それはおいらのことじゃ」と喉元まで出かかったが、すんでの所で堪えて、静かにふんふん、とだけ相槌を打ちました。

「そいでな、その男の家の庭に松の木があるんじゃが、その根本を掘ったら、宝物が出て来るというんじゃ。おかしな話じゃろう? 第一、わしは乗鞍山の沢上なんてところは知らんし、よしんば知っていても、そんな馬鹿げた夢を本気にすることなどせん。お前さんもいい加減、目を覚まして帰ったらどうかのう」

そう言うので、長吉は、まさに夢の老人はこのことを言っていたのだと確信し、家まで飛んで帰りました。そして、言われたように松の木の根本を掘り起こしてみると、そこから目もくらむほどの金銀財宝が出て来るではありませんか。

長吉はそのおかげで大金持ちになり、村人から福徳長者と呼ばれ、いい人生を送ったそうな。




不思議な夢を見た男の話です。

以前記事にした、『山を呑んだ男』では、自らの不幸な結末を暗示するものとして、夢が登場しますが、今回は反対に、幸福を呼び込むものとして夢が出てきます。

夢に登場する白髭の老人が何者かは分かりませんが、幸福を象徴する仙人のような存在なのでしょうか。

自分もこんな夢を見てみたいものですね。苦せずして、裕福な生活を手に入れることは、誰もが一度は考えたことがある理想だと思います。

しかし、それにしても、この話、だと思いませんか?

だって、金銀財宝が長吉の家の庭に埋まっているなら、最初からそうだと老人が長吉に直接話せばいいではありませんか。わざわざ、遠くの町まで行かせて、何日も待たせる意味が分かりません。

もし僕が長吉だったら、あの爺さんめ、まどろこっしいことをさせやがって、と毒づくに違いありません。

いや、これはもしかすると、あれでしょうか。

老人から財宝を手にするのに値する人間かどうか試された、ということです。

なるほど、そうだとすれば納得です。

豆腐屋の主人のように、たかが夢だと一蹴するような人間ではなく、不思議なことでも素直に信じる事のできる、純粋な心根を持った長吉だからこそ、富が与えられたのでしょう。

プロフィール

momokaru

Author:momokaru
不思議で奇妙なお話に目がない変人。妖怪、神様、奇談、民話、伝統文化などなど、主に日本にまつわる民族学の世界を探訪していきたい。

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